「無添加」。
よく耳にする販促ワードです。

例えば何かの添加物にアレルギーを起こす方や肌荒れ経験がある方、もしくはできれば避けたい方にとって、商品を探す時に「無添加」というワードに目がいくと思います。
当店の石鹸はそうした方にも使っていただきたいのですが、商品説明にこのワードを使うことに私は強い躊躇いを感じます。

何故なら世の中の「無添加」は曖昧で、「完全無添加」ではなく「一部添加、一部無添加」であり、「完全無添加」な意味合いとは異なるからです。

「無添加」とは、化粧品の場合、「旧表示指定成分」が添加されていないものを指すことが多く、あるいは「着色料無添加」であるだけでも「無添加」と謳うものもあります。

※「旧表示指定成分」については下記に※

つまり「無添加」とは、「ある一部の添加物の添加が無い」と同義であり、「完全に添加物が無い」という意味ではありません。

もちろん、市場に出回るには、商品が分離したり硬さを保てなかったり劣化したりする方が問題になるので、必ずや安定化剤や防腐剤などの添加物が必要になります。
また、化粧品は皮膚に使用するものとして、安定化と防腐を整えた商品でなくては認可もされません。

よって、スキンケア品としての完全無添加の商品などは、市場では流通しません。

私は添加物の全てを悪としているのではなく、必要不可欠でもあるため、それに抵抗があるわけではありません。
抵抗は、消費者に対して分かりにくい「無添加」というワードを使うことにあります。

しかも、薬事法では安定化や防腐の必要性については定義がありますが、現時点では「無添加」と表示するに当たっての明確な基準や規定及びルールはありません。
「無添加化粧品」「無添加石鹸」などというものの「無添加」は実に曖昧で、真には意味不明なワードです。

完全無添加のメリットを簡単に説明すると、あくまでも自然素材である点、そして人体だけではなく、自然環境でも分解できる点です。

自然界に存在しない合成化学物質は、人体や自然環境が分解できるリミッターを越えると蓄積し、それが抱える毒性、発ガン性及び内分泌錯乱の恐れがあります。

蓄積による被害は、だいたいはすぐには表れないのが特徴です。
早ければ数ヶ月ですが、中には年数をかけての蓄積で表れる場合が多々なので、自覚なきサイレントキラーでもあります。
(食品も同じくで、３年後に問題が起こる例が多数です。)

しかしながら、現代では全ての添加物を排除する生活などできるわけもなく、できたとしたらば不便極まりなく、口にするもの皮膚に塗るものを購入する際に全ての成分を把握するには、あまりに細かくて骨が折れます。

しかも、全成分表示義務になっていても、製品自体の防腐や脱色防止に使われた成分の記載は必要ありません。
これはグレーゾーンに当たります。
企業秘密成分も、それが薬事で認められたら同じくです。

また、医薬部外品の成分はほとんど闇です。

そして「ある成分を抽出する際に混入するであろう成分」、つまり抽出溶媒や希釈溶媒の記載はバラバラで、私が調べた頃は表示の強制もなかったと記憶しています。

これらグレーゾーンを回避するのは憶測に頼るかメーカーに突き詰めるしかないわけで、更に面倒極まりないわけで、全てからの回避など土台は無理なのです。

ただ、通常は肝臓腎臓で分解できるし、人は代謝を止めません。
なので、むやみやたらと神経質になる必要はありません。
けど、できるだけ添加物を使用しないことは、他で添加物を使用していたとしても、蓄積を回避させます。
また、添加物同士が組み合わさって複合的な悪効果に行き着く可能性も淡くなります。

第二次世界大戦後にドイツからアメリカ経由で入ってきた天然には存在しない化学合成物質は、その大量生産による氾濫から、様々な形でアレルギーや肌荒れなどの不具合を起こす人が多発したため、化粧品では1955年に厚生労働省が化粧品の規定に従い「アレルギーを引き起こす可能性のある物質102種類の成分」を定めました。
その102種類の成分を含有する化粧品には必ず明記が必要となったので、「表示指定成分」と名付けられました。

それまでは「表示指定成分」だけを記載していた化粧品も、2001年に「全成分表示義務」となってからは「旧表示指定成分」と呼ばれています。

すでに化粧品の成分自体が5000種類ともそれ以上ともなっていた2001年にやっと、このたった102種類の表示指定成分には意味がないことに気付いたのか、上記に書いたように「表示指定成分のみ表示義務」は撤廃され、「全成分表示義務」になりました。

表示指定成分はアレルゲン等の指標にはなり得ても、様々な成分の中には表示指定成分より刺激が強いものもあるし、有効成分ですら場合によっては問題を抱えたものもあるので、表示指定成分のみの表示は意味がなくなったのです。

この旧表示指定成分に疑問を持ったので、定めた背景を調べたことがあります。
確かにアレルゲンであるものもあるものの、それらに詳しいとは言えない方々の制定であったりも。

また、成分の認可に関しては、頭の名前が同じでも可逆性と非可逆性が違うと全く問題がないのに不認可だったり、ヤバいのに認可されていたりで、何故なんだ？と、更に斜め視線で覗いてみると、厚生労働省の天下り先が製薬会社や大手の化粧品会社なんてな所にも行き着いたりしました。

私はセンテンススプリングではないし、取り合ってももらえないだろうし、そんなところをポックリ返す趣味はないので、そうなんだ、で終わりましたが、
「旧表示指定成分が添加されていたら必ず悪い」とも思わなくなり、「旧表示指定成分の配合が無いから良い」とも思えず、
また、「認可されていたら安心、認可されていなかったら問題」とも思わなくなりました。
それらが「成分は自分で理解すべきだ」と思う始まりになりました。

それまで何で構成されているのか分からなかった化粧品の全成分の公開と表示。
親切といえば親切だけど、別の面から考えると親切どころか、何か問題があっても「全部書いているから買ったあなたの責任だよ」という消費者への丸投げ不親切な気がしてならないのです。

しかも、カタカナをダラダラと羅列した成分なんて、通常は読み取れません。
多いものになると、50種類を越えます。

字の大きさは、旅行パンフレットなら「※空港税別」、保険パンフレットなら「※但し60歳まで」に当たるほどに小さいのです。

加えて、今になっても「EDTA」と「エデト酸塩」のように全く同じ成分が違う表記であったりもするのも気になります。

カタカナの羅列は、例えば「イソ　プロピル　パラベン」などと分けて読むとスンナリ読めますが、それがなんであるかをきちんと把握している人は少なくて当たり前です。

ブランド名や商品名、その上で全成分を書き出すと、小さなダラダラ羅列になってしまうのは致し方ないのも分かるのですが、「何がなんだかわかんない！」とケムに巻く魔術のようにも感じてしまいます。

ここからは販促目的ではなく、純粋な私個人の体験です。
興味がありましたらご覧ください。

多分に開店当初からみみちゃん石けんをご使用の皆様はご存知でありますが、私は過去、あらゆる化粧品を使ってきました。
化粧品で肌に魔法がかかる気がしていたのです。

もともとは阪神大震災後から仕事が忙しくて(忙しくせざるを得ず)、39才辺りで慢性寝不足による肌落ち肌クスミに気付き、化粧品で回避できないものかと買いあさり始めたことから始まります。

そのしばらく後に全成分の表示が義務付けられた際に「こりゃなんだ？」な好奇心から成分を読み取ろうとしました。
どれもこれも、表層の保湿や保護をしてくれるものはあっても「根本的改善には効かないな。」と思ったから、一体、何が効くのかを調べたかったのもあります。

神戸に住んでいたからか、20代前半でのスキンケアの取っ掛かりは外資系の化粧品を扱うお店であり、ランコムやエスティローダー、ディオール、ボルゲーゼ、ヘレナ・ルビンスタイン、エリザベス・アーデンから始まりました。
良いか悪いかなんて分かりません。
若い肌は元気です。

肌落ち肌クスミを感じた39才の最初も「塗っただけで8時間睡眠を取ったかのような肌に」みたいな触れ込みのオルラーヌの化粧品でした。
外資系の方が若いときから慣れていたので抵抗もなかったのです。

しかし、深刻になった時、日本人には日本製か？などと思い、初めて有名ドメスティックブランドである資生堂に行き、ハナからクレ・ド・ポー・ボーテのラ・クレームを使いました。

その後もゲラン(何を買っても必ずアクアセロムとの併用を勧めるのはなんなんだ)、サンローラン、ラ・プレリー、シャネルなどの外資系にも興味津々。
ドクターズなら過激系のドクター・ペリコン、果ては中身を問い詰めたら「国家機密」だと言われたジェロビタール。
ドメスティックではコスメデコルテAQ、アルビオンエクスヴィの魔術にかかりもしました。

そして、今よりもっと、おおよそナチュラルだったジュリークを使った際の肌の芯への手応えははっきりと記憶に残り、オーガニック化粧品に傾倒していきます。

まだまだナチュラル以外のものも使いながら、(謳いでなく本当の)オーガニックブランドであるソルーナやアタノール、ジャネスを使った時の肌の響きには衝撃を受け(特にソルーナ)、後にヴィアロームのフリクションに行き着きます。

100%精油ケアのフリクションには大きな影響を受け、ブレンドオイルを自作するきっかけになりました。

この辺りからオイルそのものの組成と精油に強い興味を持ったのと、なまじっか成分をある程度は把握できるようになっていただけに、ほとんどの普通の化粧品に興味がなくなります。

加えて
「むやみやたらと落とし過ぎてから、保湿系をたくさん与える流れ」
にうんざりして、いつかに友人にいただいた手作り石鹸を思い出して作りはじめると、とうとう普通の化粧品がほぼ不必要になったため、通年ほとんどを石鹸とブレンドオイルで過ごすようになりました。

結果。
たくさんの化粧品を盛りに盛っていた頃に比べると、嘘のように肌が安定しました。

常に水分油分のバランスがとれ、通年、乾燥を感じることもなくなりました。
肌の小さな炎症だったのか、毛細血管が透ける薄肌だったせいでのおかしな色ムラも出なくなったので、ノーファンデにも抵抗がなくなり、寝不足でもほとんど表面には表れません。
要するに肌が揺らがなくなり、とても丈夫になったのです。

自活力を養うとか、ホメオパシー云々とかって、それらを謳う化粧品ではなくて、むやみやたらと添加物を盛らないことで手に入るのだ、と、私はあらゆる化粧品を使ってきたからこそ、体験から言い切れます。

全ての化粧品や添加物を否定する気は全くありません。
表層の保湿や保護に長けている優秀品もあり、表層の保湿や保護はスキンケアの要でもあるので必要です。
たまに夢を買う高揚感も必要だし、メイク品はオーガニックコスメにこだわってはいません。

ただ、「できる部分」だけでかまわないので、「できるだけ回避する」ことはお勧めしたいです。

合成化学物質が日本に氾濫し、その便利さに歓喜し、その害をまだ広くは把握していないであろう頃に私は生まれています。

けど、後で思い出したに、私の母はいわゆるインスタント物を使いませんでした。
昭和40年辺りから合理性だけは重んじてか電子レンジを率先して使うような人だったので、特に新しい物に神経質な人ではなかったのですが、出汁も必ず鰹やイリコで取っていたし、家には化学調味料である味の素も味塩もありませんでした。

私が幼い頃、凄く毒々しいきつい色のジュースの粉末が存在しましたが、そんなものを誰かにいただいた際にはサクッと捨てるような人で、私はファンタが飲みたいのにプラッシー(ファンタよりはナチュラルな飲料)しか注文してくれませんでした。
私が幼い頃のファンタは、オレンジもグレープも舌が染まるくらい強烈な色をしていたのです(後に淡くなりました)。

といっても、私自身は高度成長期の落とし子でもあり、添加物に無知でもあったし、若さゆえもあり、ことさらこだわりはありませんでした。
ただ、インスタントを食べさせられなかったからか、インスタントがやたら不味い。
カップラーメンはしょっぱいだけだし、セントラルキッチンからドサッと運ばれて来る出来合いものに変な匂いを感じて食べたくない。
なので無理なく、自然に合成化学物質をほぼ避けることとなります。

私は母に
「子供は丈夫なだけで親孝行」と、泣いて喜ばれたほどに丈夫で健康です。
それはよくよく考えると、ある面では母のおかげであると思われます。

そんな中、子供が生まれ、
「この子の身体は私が作るのか。」
と青くなるほどに責任を感じたため、料理を始めるわけですが、インスタントは簡単だけど不味いからきちんと作るという生活になり、結果的に後々も余計な添加物をほぼ避ける形となります。
それが全ての理由とは思いませんが、私の子供も非常に丈夫に成長しました。

子供も私と同じく添加物に神経質ではないのですが、これも私と同じく合成化学物質が口に合わないため、年齢のわりに添加物の摂取はかなり少ないと思われ、36才になろうとする現在も丈夫で健康です。

また、恐ろしいことに胎児は母体の有害物質を抱えて出るそうなので(代わりに母体はかなりクリーンになります)、子供は生まれた時から母親の有害物質を持ち、そこから分解できない添加物を摂取し、蓄積を始めます。

「自然食しかなかった明治生まれの母」から生まれた子供はハナからクリーンであることを考えると、多い少ないはあれど、現代はハナから有害物質を潜ませた子供ということになり、いわば環境ホルモン作用などの支障が多くなっているのは確かです。

よって、それが全ての根元ではないとしても、口からの摂取も「できる部分」だけでかまわないので、「できるだけ回避する」に越したことはないと思います。